No Rainbows, No Ruby Slippers, But a Pen

本ブログでは研究関連で読んでいる書籍、(新作)映画作品の紹介、日々の考察を中心に共有していきます。また、漫画、アニメ、小説、写真などについても感想などを述べていけたらと思っています。

『<ポスト3.11>メディア言説再考』出版のお知らせ

 法政大学出版局より『<ポスト3.11>メディア言説再考』(ミツヨ・ワダ・マルシアーノ編)が出版されました。私は中川龍太郎監督作品『Calling』『走れ、絶望に追いつかれない速さで』『四月の永い夢』を喪の映画として分析した論文「喪失と対峙する─震災以後の喪の映画における移動性」を寄稿しています。

 

〈ポスト3.11〉メディア言説再考

〈ポスト3.11〉メディア言説再考

 

 

 この論文は下記二つの口頭発表が元になっています。

・「喪失と対峙する─『走れ、絶望に追いつかれない速さで』を一例に」第13回日本映画学会全国大会

・"Towards the Light: Rise of Independent Filmmaker Ryutaro Nakagawa in Post-3.11 Japanese Cinema." 2018 Annual Conference of the Society for Cinema and Media Studies

 

 喪の映画に関する先行研究でもっとも参考にした文献

Mourning Films: A Critical Study of Loss and Grieving in Cinema (English Edition)

Mourning Films: A Critical Study of Loss and Grieving in Cinema (English Edition)

 

 

 本稿で分析した中川龍太郎作品

走れ、絶望に追いつかれない速さで [DVD]

走れ、絶望に追いつかれない速さで [DVD]

 

 

四月の永い夢 [DVD]

四月の永い夢 [DVD]

 

 

Calling [DVD]

Calling [DVD]

 

 

木下惠介映画作品の脚本所蔵状況【早稲田大学演劇博物館】

 早稲田大学演劇博物館には映画・テレビの台本が数多く所蔵されている。木下惠介映画作品の脚本所蔵状況は以下の通り。1940年代の作品の脚本はほぼ所蔵なしだが、1950年代のものは『婚約指環』を除きほぼ全て揃っている。1960年代は、木下が松竹を退社する1964年までのものは揃っており、その後製作した『なつかしき笛や太鼓』(1967年)、『父よ母よ!』(1980年)以外は所蔵がないことが分かった。

 

所蔵あり

1947年 『不死鳥』

1948年 『女』

1949年 『破れ太鼓』

1951年 『善魔』

1951年 『カルメン故郷に帰る』(白黒版)

1951年 『少年期』

1951年 『海の花火』

1952年 『カルメン純情す

1953年 『日本の悲劇』

1954年 『女の園

1954年 『二十四の瞳

1955年 『遠い雲』(映画タイムス社発刊のシナリオ)

1955年 『野菊の如き君なりき』

1956年 『夕やけ雲』

1956年 『太陽とバラ』

1957年 『喜びも悲しみも幾歳月』

1958年 『風前の灯』

1958年 『楢山節考

1958年 『この天の虹』

1958年 『風花』

1959年 『惜春鳥』

1959年 『今日もまたかくてありなん』

1960年 『春の夢』

1960年 『笛吹川

1961年 『永遠の人』

1962年 『今年の恋』

1962年 『二人で歩いた幾春秋』

1963年 『歌え若人達』

1963年 『死闘の伝説』

1964年 『香華

1967年 『なつかしき笛や太鼓』

1980年 『父よ母よ!』

 

所蔵なし

1943年 『花咲く港』

1943年 『生きてゐる孫六

1944年 『歓呼の町』

1944年 『陸軍』

1946年 『大曽根家の朝』

1946年 『わが恋せし乙女』

1947年 『結婚』

1948年 『肖像』

1948年 『破戒』

1949年 『お嬢さん乾杯』

1949年 『新釈四谷怪談

1950年 『婚約指環』

1976年 『スリランカの愛と別れ』

1979年 『衝動殺人 息子よ』

1983年 『この子を残して』

1986年 『新・喜びも悲しみも幾歳月』

1988年 『父』

 

エンパクシネマ vol.2 (2018年)のダイジェスト版を公開しました。

2018年10月8日に早稲田大学演劇博物館で開催した野外無声映画上映会「エンパクシネマ」の様子を撮影した動画のダイジェスト版が公開されました。4分ほどの映像ですが、活動写真弁士の澤登翠さん、山城秀之さん、ピアニストの柳下美恵さんの伴奏を味わうことができると思います。

 

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『老ナルキソス』(東海林毅、2017)

 下北沢のDARWIN ROOMで開催された第二回LGBTスタディーズ「多様な性のあり方」 にて、東海林毅監督の『老ナルキソス』を観た。第27回レインボー・リール東京をはじめ、国内外の様々な映画祭で賞を獲得している作品で、昨年からずっと気になっていた。

 

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 国内外の昨今のLGBT映画・クィア映画が若さを物語の中心に置く傾向にある。『Starting Over』(西原孝至、2014)、『春みたいだ』(シガヤダイスケ、2017)、『君の名前で僕を呼んで』(ルカ・グァダニーノ、2017)、『彼の見つめる先に』(ダニエル・ヒベイノ、2014)といった作品が例に挙げられるだろう。LGBT映画・クィア映画を取り巻くこのような状況のなか、『老ナルキソス』は古稀間近のゲイ男性を主人公に据え、国際映画祭マーケットで不可視化されやすい老人の性的欲望をSMやスパンキングという行為を通じて描く。その意味で本作は非常に野心的な作品だといえる。

 

 本作最大の面白さは、田村泰二郎演じる主人公・山崎の老いた身体だ。シワだらけの顔や首、筋肉が衰え垂れ下がった胸やたるんだ腹、堅さを失った尻。山崎の相手をする20代半ばのレオ(高橋里央)の裸は上半身だけが提示される。彼の身体もまたさほど筋肉質というわけではないが、柔らかさの中にしっかりとした堅さとみずみずしさが存在するのはスクリーンを通しても明らかだった。「若い頃の僕は自分が痛めつけられる姿に酔っていた。でも、いつからかそうはならなくなった」という台詞が示すように、山崎は自己陶酔に溺れることで、痛みを経路に快楽を得てきた。「いつからか」という言葉には、時間によって残酷にも奪われた自己の美しさへの切望さえも感じられた。

 

 もう一つ面白かったのは横顔への視線だ。レオの横顔に対する視線は似顔絵と具現化されていたし、湖面に映る自分の顔を見つめるナルキッソスもまたその横顔が絵画に描かれている。作中には、登場人物を正面から捉えるショットはもちろんあったが、横顔を捉えたショットの方も多かった気がする。男性の美しい表情、しかも性的欲望を受け止める客体化された身体としての横顔は、木下惠介映画に登場した佐田啓二が担っていたものと共通する点もあり、男性の美しさ、若さの美しさへの羨望という意味で映画史的/絵画史的な連続性を辿ってみても面白いだろうなと思った。

 

 あと、ドラァグクイーンのマーガレットさんが1990年代の映画で狂気的なゲイ男性を扱う作品を挙げていたが、その辺の歴史に関してはB. Ruby Rich、Alexander Doty、Richard Dyerによる批評を読むといいだろう。

 

 老化した身体とセクシュアリティについては、最近出版された下記の書籍が勉強になった。

Sexuality, Disability, and Aging: Queer Temporalities of the Phallus

Sexuality, Disability, and Aging: Queer Temporalities of the Phallus

 

 

 

 

 

 

 

 

英単語 2019年2月7日

straddle: 両足を広げる、またを広げて立つ

adduce: (〜を)(例証として)挙げる、提示する

reminisce: 追憶する、思い出を語る

rampant: 激しい、流行する、自由奔放な

sediment: 沈殿物、おり

indignant: (不正や卑劣な行為に対して憤慨することを表して)憤った、怒った

precarity: 予測できない、または不安的な状態

furtive: ひそかな、こそこそする、内密の

英単語 2019年2月6日

actualize: 現実化する

look askew at: 斜めから見る

putatively: 推定的に

smaciation:憔悴

sublimate: (望ましい行為に)転化する、昇華する

acquiesce: (不本意ながら文句を言わないで)(-に)同意する、黙って従う

ineffable: 言いようのない

congeries of: 〜の集積

decidely: 明らかに

surreptitiously: 人目を忍んで行う

sero-converted: 抗体陽転する

epiphenomenon: 付帯兆候

International Symposium: Excavating Queer Memories through Visual Media and Archive

This week on the 18th of January, we are welcoming filmmaker/ producer Mr. Stu Maddux from the GLBT Historical Society in San Francisco and film scholar Prof. Mitsuyo Wada-Marciano from Kyoto University to our international symposium "Excavating Queer Memories through Visual Media and Archives." Mr. Maddux will discuss the background of his film Reel In The Closet and archives of home movies by LGBTQ people, Prof. Wada-Marciano will give an overview of film archives in Japan, and I will speak about employing the concept of "cruising" as a possible method of exploring gender/ sexuality related collections at the Tsubouchi Memorial Theatre Museum by introducing previous attempts by curators and scholars overseas.

 

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