映画作家松山のぞみさんの作品について覚書
今年度から映画作家の松山のぞみさんがゼミに加わった。私が所属するゼミには映画製作を行なう大学院生も在籍しており、活発に作品を製作、発表している松山さんの加入は映画研究を行なう上で大変心強い。
松山さんの経歴についてはこちらから。
松山さんが監督した作品の一部はYouTubeで視聴可能である。
Silent Noise
Part 1
Part 2
一晩中聞こえる赤ん坊の声に悩まされる主人公の女性。最近職を失ったばかりで休職中である。恋人もいて幸せそうな一瞬も見せるが、彼との時間も隣室から聞こえる赤ん坊の泣き声に苛立ってしまう。そんなある日、彼女は急な吐き気に襲われる。その後彼女を訪れる恋人との身体的な接触をこばんでしまう。彼女と赤ん坊の泣き声の関係はどのように変化していくのだろうか。
Silent Noiseは物語映画の形式にそって製作されている。主人公が経験する苛立ちが高まり、発散される過程が非常に分かりやすく提示される。英語も聞き取りやすいのでぜひ観て頂きたい。
YouTubeにはアップされていないのだが、『セカイ』、GIFT、『空に記憶があったなら』といった実験的な映画作品も発表している。『セカイ』では二つのスクリーンに左目と右目のクロースアップを別々に提示し、映画が進むにつれて、それぞれのスクリーンの目が照らさせる色が変化していく。カット割はどこで行なえばいいのだろうか、と分析するのに悩まされたが、色が変化することでショットが切り替ると考えてよいのかもしれない。この点についてはぜひ松山さんに尋ねたい。
GIFTはスチル写真を連結編集した作品。自然音と加工音、そしてナレーションの挿入によって本来静止している写真に動きが与えられている(こんな解釈でいいのだろうか)。本作でみられる編集はデジタル映画時代だからこそ可能な点も多くあるように見える。特に写真から人物が消える加工は、まるでその部分だけフィルム写真の表面から乳液が溶け、イメージが剥がれ落ちていくかのようである。
精力的に作品制作に取り組んでいるようなので、これからの作品も楽しみだ。