No Rainbows, No Ruby Slippers, But a Pen

本ブログでは研究関連で読んでいる書籍、(新作)映画作品の紹介、日々の考察を中心に共有していきます。また、漫画、アニメ、小説、写真などについても感想などを述べていけたらと思っています。

ちょっと暗すぎじゃないか〜『カミングアウト』

 犬童一利監督作『カミングアウト』(2014年)をDVDで観た。横川泰次が製作を担当しし、高橋直人主演である。

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 主人公は大学生の赤間陽で、本作は基本的に陽が友人であり、陽が恋心を抱いている緑川昇(岡本優)や家族にゲイであることをカミングアウトするまでの葛藤を描く。大学のサークル室(いわゆるボックス?)での大学生同士の談話シーン以外は、主に陽の実家のリビングと自室や、陽が通うゲイバーで物語が展開する。

 

 映画のプロットはとてもシンプルで、ゲイであること、カミングアウトすること、結婚して子どもをもつことなど、セクシャル・マイノリティが抱える悩みを大学生の視点に当てはめている。待っていても来ない「いつか」に期待を寄せるのではなく、「いつか」を「いま」に自分の力で変える。孫の顔を楽しみにする母親に対して陽はどのようにカミングアウトするのか?大学をやめて俳優業を学ぶためにアメリカへ行くと宣言する昇に、陽は気持ちを伝えることはできるのか?

 

 映画の冒頭から陽が昇に恋していることは、陽のPOVショットによる演出によって明白である。昇の下宿に陽が泊まるシーンでは、風呂から上がり、上半身裸で昇が歩く様子を陽の視線が追いかける。結論から言えば、彼らが結ばれることはない。陽が昇にカミングアウトした後、それまでの二人の関係性以上に友情が深まったようなシーンの連続で提示される二人の笑顔は、ゲイ観客として微笑ましく映る。一方、両親に対してカミングアウトすることの重圧、息子がゲイであることを簡単には受け入れられない母親とのシーンなど、カミングアウトという行為は、その行為の後も様々な葛藤や不安がつきまとうことも、この映画はきちんと描いている。

 

 多くの人にこの映画を観てもらいたいという思いが強い一方で、この映画はいかんせん暗すぎる。それは照明のせいだろうけれど、自室で母親と話をするシーンは本当に暗い。カミングアウトという行為が決して明るさだけを有する行為ではないことは理解しているが、観ていてしんどかった。監督としては、そのしんどさを映像的に表現したかったのかもしれないが...

 

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カミングアウト・レターズ

カミングアウト・レターズ

 

 劇中で主人公が読んでいる本