No Rainbows, No Ruby Slippers, But a Pen

本ブログでは研究関連で読んでいる書籍、(新作)映画作品の紹介、日々の考察を中心に共有していきます。また、漫画、アニメ、小説、写真などについても感想などを述べていけたらと思っています。

リサーチinサンフランシスコ:UCBとPacific Film Archive

4月27日から7泊9日でサンフランシスコにてリサーチを行なってきた。サンフランシスコに行くのは今回が初めてだったため、もっと事前調査が必要なこともたくさんあったと反省している点もあるが、全体的にとても良い経験になった。

 

Fisherman's Wharf近くのインをベースにして、映画ロケーション、博物館や芸術学校へ訪問した。今回の記事では、4月29日と30日に訪れたUniversity of California, Berkeley(UCB)とPacific Film Archiveについてお話したい。

 

UCBへは最寄りのPowell St.駅からDowntown Berkeley駅までBART(Bay Area Rapid Transit)に乗って30分ほどで行くことが出来る。(運賃や電車の時刻についてはこちらから参照できる:http://www.bart.gov)Downtown Berkeley駅から大学敷地まで徒歩五分ほどで、周辺には大学街らしい飲食店等が並んでいた。

 

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4月29日のUCB訪問の主な目的は、映画学関係の授業に参加することだった。博士論文では戦後日本映画を中心に扱う予定なので、戦後日本について扱っている授業がないか事前に調べたところ、ミリアム・サス(Miryam Sas)先生がCultural Geographies of Postwar Japan: Cinema, Performance, and Artという授業を教えていることが分かった。4月末といえばアメリカの大学では期末試験直前で教授陣、学生ともに忙しくしている時期であるため、少し躊躇ったが、授業を聴講できるかダメもとで連絡をした。学期末ということもあり、残念ながら日本映画について言及はされないが、幸いなことに聴講の承諾を得ることができたので、後輩と二人で授業に参加させて頂いた。

 

サス先生についての情報はこちらから:http://ieas.berkeley.edu/faculty/sas.html

 

サス先生の授業は大学院生が五名というアメリカらしい少人数制ゼミ形式。日本映画、漫画やアニメ研究、演劇研究を専攻する学生が集まっており、日本人の方も一名いた。僕らが聴講した時は、東大の内野儀先生のCrucible Bodies: Contemporary Japanese Performance from Brecht to the Millenniumをテキストとして戦後日本の舞台演劇について議論された。「指輪ホテル」や「珍しいキノコ」、「KATHY」など演劇について門外漢な僕の頭ではいまいち理解できなかったけれど、いくつか名前を聞いたことがある女性アーティストもいた。

Crucible Bodies: Postwar Japanese Performance from Brecht to the New Millennium (Enactments)

Crucible Bodies: Postwar Japanese Performance from Brecht to the New Millennium (Enactments)

 

3時間ぶっ続けのゼミは多少疲れたけれど、先生をファシリテーターとして学生が中心 になって議論を進める授業形式は大変参考になった。学生もテキストをしっかり読み込んでいる。この点については、僕が所属するゼミでの読書会も見習わなければならない。

 

UCB訪問のもう一つの目的は、UCBのPacific Film Archiveで調査をすること。下の写真は映画上映が行なわれている建物だ。

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建物が大き過ぎて入り口の写真しか撮れなかったが、こちらがアーカイブと図書館の建物。

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アーカイブは月曜から水曜日の午後1時から5時までしかあいていない。入り口でサインインすると、入り口から右手奥にある図書館への扉のロックを解除してもらえる仕組みになっている。29日は30分しか調査時間を頂けなかったので、30日に再度訪問して木下恵介小津安二郎について資料を集めた。

 

30日の調査では、まず後輩が参考にしたいと言っていた小津に関する資料を収集した。木下恵介に関する資料はキネマ旬報や映画ファンが中心であり、英語の文献はロンドンでの調査の時と同様に皆無だった。僕が調べきれていないだけだろうが、木下については十全な研究が行われていないことは明らかである。

 

PFAで資料を収集するには1枚10セントでコピーをするか、スキャンして自分のメールアドレスにPDFファイルで送信する2つの手段がある。お金も紙も勿体ないので、PDFファイルで送りたかったのだが、機械の調子が悪かったため、コピーもスキャンもできない状態だった。スキャンがOKならカメラで1ページずつ写真撮影することもOKかもしれないと思い聞いてみたら、すんなり了承を得られた。1時間半ほどかけて500枚程度撮影した。木下恵介に関しては、日本語や英語の論文をフランス語に翻訳された文献が一冊見つかった。

 

PFAはCineFilesというデジタルアーカイブも提供している。こちらを使えば、デジタル化されている資料は海外からでもアクセスし、PDFファイルをダウンロードできる。すべての映画監督や作品について網羅しているわけではないが、ぜひ活用してもらいたい。

CineFiles: http://www.mip.berkeley.edu/cinefiles/Welcome.jsp