No Rainbows, No Ruby Slippers, But a Pen

本ブログでは研究関連で読んでいる書籍、(新作)映画作品の紹介、日々の考察を中心に共有していきます。また、漫画、アニメ、小説、写真などについても感想などを述べていけたらと思っています。

『ゲティ家の身代金』(リドリー・スコット監督、All the Money in the World, 2017)

よみうりホールで2018年5月14日に開催された『ゲティ家の身代金』(All the Money in the World, 2017)の試写に参加してきた。本作は2018年のアカデミー賞ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたもので、監督はリドリー・スコット

 


 

 舞台は1973年ローマ。当時、世界一の大富豪と呼ばれていたアメリカ人石油王ジャン・ポール・ゲティの孫、ジャン・ポール・ゲティ三世の誘拐事件をめぐり、誘拐犯と元義理の父・ゲティに立ち向かう母親が身代金収集に奔走する姿を描く。実際に起きた事件をもとに製作された。チャーリー・プラマー演じるゲティ三世が実際の人物とよく似ていたのが面白い。

 

 最初の30分くらいは展開が単調すぎて途中眠たくなる場面もいくつかあったが、後半になると持ち直した印象を抱いた。シリアスなサスペンスである一方、ときどき笑える台詞や演出があり、声に出して笑っていた観客も多かった。主演のミッシェル・ウィリアムズは大きく口を開けずに、もごもごと低い声で文句を言う演技がどの作品でも魅力的だと思うんだが、本作でもそれが活かされていた。

 

 試写会場でもらった宣伝プレスに「華麗で異常な傑作サスペンス」と書いてある。たしかに、世界一の大富豪ゲティ家の装飾やローマの建物や景色はたしかに「華麗」に映ったが、「異常」と言えるほどの状況なんだろうかと不思議に思った。身代金の支払いを拒否する近親者の話自体はよくあるし、誘拐物で母親が矢面に立つのも珍しいことではないだろう。(父親だったら、TAKENのリーアム・ニーソンみたいにバンバン暴力で解決する方向で製作する可能性は高い。母親が誘拐犯をなぎ倒す映画だって観てみたい。)あとはもっとハラハラ感が欲しかった。