No Rainbows, No Ruby Slippers, But a Pen

本ブログでは研究関連で読んでいる書籍、(新作)映画作品の紹介、日々の考察を中心に共有していきます。また、漫画、アニメ、小説、写真などについても感想などを述べていけたらと思っています。

2016-01-01から1年間の記事一覧

『バイオハザード:ザ・ファイナル』(ポール・W・S・アンダーソン、2016年)

クリスマス週末の三連休に、ポール・W・S・アンダーソン監督の『バイオハザード:ザ・ファイナル』を観てきた。本作は、カプコンのテレビゲームを原作としたシリーズの最終作だ。中学生の頃からテレビゲームを毎作品プレイしているし、映画化作品もすべて…

Michael DeAngelis, "Authorship and New Queer Cinema: The Case of Todd Haynes" 言及作品まとめ

副指導官による今週の映画学ゼミはニュー・クィア・シネマについて。今回のリーディング課題の一つに、Michael DeAngelisの"Authorship and New Queer Cinema: The Case of Todd Haynes"がある。本論文では、『キャロル』で話題になったトッド・ヘインズ監督…

木下惠介に関して書かれた英語ウェブサイト

木下惠介は彼と同時代の映画作家たちと比べると、海外において同等に注目されているとは言い難い。だが、2012年の生誕100周年以降、日本語以外のメディアでもときどき取り上げられている。今回は英語で見つかった木下惠介関連の記事をメモ代わりにアップして…

Amazonプライムで観られるゲイを扱った映画

スマホやタブレット、テレビで映画やテレビ番組を観られるHuluやNetflixといった月額有料動画サイト/アプリがある。いろいろと登録してきたが、今はAmazonプライムだけアカウントを持っている。Huluだと木下惠介の作品をほとんど観られると聞いたので、登録…

木下惠介の誕生日

12月5日は、僕が研究対象にしている映画監督木下惠介の誕生日だ。1912年生まれなので、もし今も生きていたら104歳になっていた。ちなみに弟の忠司さんは今年で100歳。100歳記念パーティに参加したとき初めてお会いしたのだけど、忠司さんは今もパワフルだ。 …

レイチェル・ラング(Rachel Lang)監督が気になる

今日はRachel Lang監督による『White Turnips Make it Hard to Sleep』(2011)と『For You I Will Fight』(2010)を観た。二作品とも現在MUBIにアップされている。それぞれ30分未満なのでさくっと観られる。 Salome Richardという女優が両作品で主人公アナ…

『アピチャッポン・ウィーラセタクン----光と記憶のアーティスト』(フィルムアート社)

アピチャッポン・ウィーラセタクンに関する書籍『アピチャッポン・ウィーラセタクン----光と記憶のアーティスト』がフィルムアート社から12月20日に発売される。僕はカレン・ニューマンの論文「前世を思い出せる男-アピチャッポン・ウィーラセタクンによる…

観たい映画について(Nov 28, 2016)

久しぶりのエントリー。研究会に参加したり、アメリカに行ったりと、10月末から昨日まで忙しかった。昨日はある研究会でChim↑Pomの活動や、丸木美術館の学芸員さんのお話を聞くことができたので勉強になったことを近いうちに書き記したい。 今回は最近手に入…

表象文化論学会ニューズレターREPRE第28号に新刊紹介文が掲載されました。

表象文化論学会ニューズレターREPRE第28号で、小野智恵さんの『ロバート・アルトマン 即興性のパラドクス ニュー・シネマ時代のスタイル』 (勁草書房、2016年3月)について短い紹介文を書かせていただきました。 表象文化論学会ニューズレター〈REPRE〉:新…

アジアフォーカス・福岡国際映画祭に参加してきます。

今週木曜日、9月15日からアジアフォーカス・福岡国際映画祭が博多市内で始まります。関西の映画祭にはこれまで何度か参加してきましたが、福岡まで足を運ぶのは今回が初めてなのでとても楽しみです。 今回は映画学者のミツヨ・ワダ・マルシアーノ先生が映画…

音楽学会西日本支部第34回例会で口頭発表を行いました。

先週の9月3日、キャンパスプラザ京都で口頭発表を行いました。 今回は、音楽学会西日本支部第34回例会のラウンドテーブル「日本映画における楽曲の『流用』ーー映画音楽と意味作用』」に非会員として参加してきました。僕の発表題目は、「木下兄弟による既成…

アフェクト理論についての文献

ここ10年、20年ほどアフェクト理論(affect theory)に関する議論が盛り上がっており、学際的にもこの理論を援用した論文が多数書かれているようだ。映画研究にもその流れは少しずつ見られる。とは言っても、僕はこの理論についてはまったくの不勉強なので、…

英語論文がReconstruction(16.2)に掲載されました。

去年の3月に提出して、査読はどうなったのか、忘れ去られてしまったんじゃないかと心配していた英語論文が無事に査読を通過し、今月掲載されました。 "Queering Film Location and the Byakkotai: Kinoshita Keisuke's Queer Sensibility and Sekishuncho (1…

Summer Vacation (Hofesh Gadol, dirs. Tal Granit, Sharon Maymon, Israel, 2012)

現在MUBIにアップされているSummer Vacation(Hofesh Gadol、2012)という映画を観た。監督はTal GranitとSharon Maymonで、イスラエル資本の作品。IMDBによれば、2012年から2014年にかけて、イスラエル、アメリカ、ポーランド、フランスの映画祭に出品され…

ダイレクト・シネマとシネマ・ヴェリテの違い

今週読んだ論文のなかで、何度も「ダイレクト・シネマ」という言葉が出てきたので、今回は「ダイレクト・シネマ」と「シネマ・ヴェリテ」についておさらいしたい。定義は両方とも『現代映画用語事典』から抜粋引用する。 読んだ論文 NORNES, Abe Mark. "Mark…

小野智恵『ロバート・アルトマン 即興性のパラドクス ニュー・シネマ時代のスタイル』の参考文献からメモ

研究室の先輩、小野智恵さんが出版された『ロバート・アルトマン 即興性のパラドクス ニュー・シネマ時代のスタイル』をようやく読み終えた。映画技法や音響からアルトマン映画と古典的ハリウッド映画の差異を細かく検証していく試みから、とても多くを学ん…

ゼミ用メモ:アニメーション

今週のゼミで、M2が修論中間発表としてアニメーションについて発表するので、今回はそのためのメモ。 ウィンザー・マッケイから二本。 「恐竜ガーティー」(1914) Gertie the Dinosaur (1914) - World's 1st Keyframe Animation Cartoon - Winsor McCay 「…

『逢びき』(Brief Encounter, David Lean, 1945)

今週のゼミ発表はDavid Leanの『逢びき』が議論の対象となるので、予習のため情報収集をしておく。原作はノエル・カワード(Noel Coward)の『静物画』。 ローラを捉えたキャメラが次第に傾いていくところは毎回ぐっとくる。 Brief Encounter [DVD] 出版社/…

東京レズビアン&ゲイ国際映画祭→レインボー・リール東京

25年目を迎えた東京レズビアン&ゲイ国際映画祭が、今年から名称を「レインボー・リール東京」へ変更した。 今年こそ東京レズビアン&ゲイ国際映画祭へ行こうと思い情報を探していたんだが、まったく何も引っかからずおかしいなーと思っていたら、名前が変わ…

紙屋牧子「『ハナコサン』(一九四三年、マキノ正博)の両義性:「明朗」な戦争プロパガンダ映画」

今週の映画学授業ではマキノ正博の『ハナコサン』(1943年2月25日公開、東宝)について論じられる予定で、リーディング課題の一つに紙屋牧子さんの論文「『ハナコサン』(一九四三年、マキノ正博)の両義性:「明朗」な戦争プロパガンダ映画」が挙げられてい…

1920年代~1930年代に製作されたAnimated American Shorts(アメリカのアニメーション作品)

今学期は同志社大学にて"Film and Animation in Translation: Hollywood and Japan"という授業を聴講している。明日は1920年代から1930年代に製作されたアメリカのアニメーション・ショーツについて議論するらしく、先生から早速YouTubeのリンクを共有しても…

映画研究書メモ

近年は映画研究書ラッシュで、僕が所属しているゼミの先輩方の単著も刊行されている。直近で読もうと思っているものをメモがわりに列挙しておく。 映画と移民 在米日系移民の映画受容とアイデンティティ 作者: 板倉史明 出版社/メーカー: 新曜社 発売日: 201…

第11回日本映画学会プロシーディングス

論文の締切続きのためブログの更新ができていませんが、昨年12月に第11会日本映画学会で行った口頭発表のプロシーディングスが発刊されました。 http://jscs.h.kyoto-u.ac.jp/proceedings-zenkoku-11.pdf 僕の発表は、「『カルメン故郷に帰る』と『カルメン…

やっぱり我が家は最高!〜山田洋次監督『家族はつらいよ』

映画館で腹を抱えて笑うには、少しばかりの勇気がいる。外国のコメディ映画を見ていたとして、字幕が追いつく前にジョークで笑ってしまって周りのお客さんにうざがられる、なんて話はよく聞く。僕が笑うと怒られるかなと、いつも気を使ってしまうのが熟年夫…

A Random Thought on 3.11

Five years ago today, I was staying at my friends Jon and Nikki's apartment for their wedding. Feeling something weird in my stomach, I woke up in the middle of night just before Nikki walked in to tell me what was happening in Japan at th…

『カルメン故郷に帰る』ロケ地の現在についてーー駅、小学校、カルメンの木

去年の日本映画学会で木下惠介監督の『カルメン故郷に帰る』について口頭発表してから、ずっとこの映画について考えている。 『カルメン故郷に帰る』が公開されたのは1951年で、撮影は1950年だった。撮影から役66年経った今、ロケ地はどんな感じになっている…

論文掲載のお知らせ

昨年の3月末に提出し、査読再審査などを経て掲載可となった論文がようやく刊行されました。 「切り返し編集による男性間の親密性表象--木下惠介『海の花火』をクィア映画として読む--」『人間・環境学』第24巻(京都大学大学院 人間・環境学研究科、2015) …

「キャンプとゲイの感受性について」Part 2("Camp and the Gay Sensibility" p.41)

今回はPart 1の続きで、「皮肉」(irony)について。 ------------------- 皮肉はキャンプの主題(subject matter)である。ここでいう皮肉とは、個人あるいはモノと文脈あるいは関連の間における、非常にちぐはぐした対照すべてを指す。もっとも不調和な対…

「キャンプとゲイの感受性について」Part 1("Camp and the Gay Sensibility" p.40-41)

レズビアン・ゲイ・クィア映画に関する文献を読んでいると、「キャンプ(camp)」という言葉をよく見かける。このキャンプと一緒に「ゲイの感受性(the gay sensibility)」という言葉も頻出するが、「ゲイの感受性」とは一体なんのこっちゃという反応があっ…

「天女の口づけーー『お嬢さん乾杯!』における原節子」『ユリイカ』2016年2月号

本日発売の『ユリイカ』2016年2月号「特集*原節子と<昭和>の風景」に寄稿をさせていただきました。 久保豊「天女の口づけーー『お嬢さん乾杯!』における原節子」p.155-163 木下惠介監督の『お嬢さん乾杯!』において、「なぜ男性主人公が原節子演じるヒ…